ジラルドの本を見ながら、一段落の年末。 [コラム]
昨日は年末に向けて進めていたある仕事も昨日無事提出して終わり(あれでOKかな)、今日は少しホッとした気分の休日でした。今回の仕事はちょっと露出がありそうで、なかなか楽しんでやれた仕事でもありました。初めての「布」を媒体とした作品を考えるという仕事(というより、あるものを作るための布のデザインを考える)だっだのですが、最初に、自分の作品の「このモチーフで」という提示があり始まったデザインでした。
いま「デザイン」と言ったのですが、ぼくの仕事は結構デザインとイラストの間を行ったり来たりすることも多く、なかなか自分でもそれが楽しかったりします。例えば「額に入れて飾る絵」を依頼されたときは、それは完全に作品性のある(イラストというよりも)絵の仕事。でも、何かに使う布のパターンを考えてと言われたときは、パターンデザイン。だけどその前に絵を描くことになるのでイラストとデザイン両方を違う視点で考えながら進めることになります。
今回の布の仕事、自分としてはなかなか基本的で分かりやすいデザインになったと思うので結果よかったかも知れません。あるモチーフを使ったパターンと言っても、そのパターンの組み方によっていくらでも違うデザインができるので、なかなか奥が深いものです。色の部分では、予め微妙に色合いを変えたパターンを用意し、出力センターで紙に印刷してみて、実際の色味を比べて決めました。でも、色校正でまた違ってくるかも。この案件もそのうちお知らせできるようになるんでしょうか。そのときにまた!
写真は先日安く買えた、大好きなデザイナー、アレキサンダー・ジラルドの大型本。この人はフォークアートの蒐集家としても有名で、さまざまな民芸品のモチーフや色彩から影響を受けたテキスタイルパターンなどの美しいデザインをたくさん作り出した人です。先日わが家が「&プレミアム」の取材を受けた時もインタビューの中でお伝えしたのですが、民芸品など純粋に人を優しい気持ちにし、生活を楽しくする素朴なるモノたちからもらえるパワーやアイデアを得て、それを自分のフィルターに通した上で再構成して自分の作品をつくるという感覚は、ぼくも最近とても意識している部分です。今年は特に、一年間そういうことを考えながら作品をつくってきたように思います。集めているだけではなく、それらから吸収したことを作品にする。それは、多分自分にしかできない感覚かもしれないと思って取り組みたいと思います。
とても素敵なつくり手の方々、さまざまな民芸品、これから始めたい布を染めるという分野。今年もいろいろな出会いがたくさんあった良い年だったように思います。もうすぐクリスマスの休日に思ったこと。ではまた!
鈴木稔の仕事/中目黒SML [民藝・手仕事・古道具]
益子の作陶家、鈴木稔さんの個展が中目黒SMLで始まっています。初日に早速おじゃましてきました。初日だったのでレセプションでフードとワインのサービスもあり(ぼくは酒は飲ませんが)おいしいスープなど少し頂きました。もちろん稔さんも在廊されてて、お話できて嬉しいです。ふと食べているときの稔さん、スプーンもってるのが左手。アッと思いつつぼくも食べていると、稔さんから「左利きなんですか?」と言われました。そうなんですよ、と左利き仲間ここにも発見。
鈴木稔さんの器は、とくにお茶を飲むカップなどわが家でも大抵毎日登場するくらい頻度が高いです。手に馴染む感じや程良いリラックス感(とでも言えばいいのか)のある味わいがあるのだけど、どこかエレガントなラインも同時にあるような。洋風のものを食べたりするのによく使われている気がします。いわゆる民藝では無いと思うのですが、民藝の器ともよく合います。
今回は、新しい薪窯で焼かれた器ということでしたが、文様が入った大皿など、見ていて楽しいものが多かったです。秋に稔さんの工房におじゃましたときにも、いろいろと作る時のエピソードなどが聞けましたが、どうやって作るとか、どう考えて作ったものだとかの話を聞くのは、とても楽しいことですね。作り手の苦しみを少し共感できるという部分もあります。でも、苦しんだ上でこうした美しいものが出来上がるんだなあと思うと、また見え方も違ってくるように思います。鈴木稔さんの個展、12月28日まで。
今回選んだ器